« 鳴神の道は細くて険しい | トップページ | 人をうまく使うのがおまえの仕事だろう!! »

2007年7月16日 (月)

天気・・・なれど、波高し

 こんな日だというのに、深い緑は変わらない。不思議と穏やかさの漂う静けさの中、私は従者と二人、道を急いでいる。
 それなのに、あまりの現実味のなさに、いつしか私は歩を緩め、そこかしこを愛でるようにゆったりとした気分になっていた。
「お急ぎくださいませ。」
 従者はそういって私をせかす。
「わかっています。けれど、今日が最後の日ゆえ。」
 わかっている。私は生き延びねばならないふと気がつくと入り江の近くまで来ている。
「こちらでございます。もう少しで着きますゆえ。」
 舗装はされているものの、こんな道を歩いたことのない私を気遣って従者はいたわるように、励ますように、私に声をかけた。
「大丈夫です。」
 私はそう微笑んで、歩調を早める。
 目の前に海が広がる。すでに、艦隊はそろっていて、いつでも飛び立てるようになっていた。
「こちらの艦にどうぞ。」
 私は言われるまま、その艦に乗り込む。
 艦の上では一族の者達が最後の晩餐を行おうとしていた。こんな日だというのに、こんな時というのに、何をのんきな。私は少なからずの憤りを感じたが、平和に慣れ親しんだ彼らに、自分の得になることしか考えない彼らに、この期に及んで言うこともない。
 艦隊がざわめき出す。
 一瞬、空がやんだ。
 その瞬間、私には何が起こったのかわからなかった。
 高い波が私の前を覆った。
 次の瞬間、目の前にいた何十人もの一族が消えてしまった。
 波しぶきに目を細め、私はただ立ちつくしていた。

|

« 鳴神の道は細くて険しい | トップページ | 人をうまく使うのがおまえの仕事だろう!! »

1万2千年前の記憶」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/216417/15774421

この記事へのトラックバック一覧です: 天気・・・なれど、波高し:

« 鳴神の道は細くて険しい | トップページ | 人をうまく使うのがおまえの仕事だろう!! »