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2007年7月30日 (月)

本当の首謀者は・・・

 夜、だと思う。うっすらと照らす月明かりのもと。
 欄干のついた縁を目指して、私は進む。慣れた宮とは違い少し位置関係がわかりにくかった。
 あまり背の高くない、それでもがっしりとした男が私を誘導する。
「おおきみ、足元にお気を付けになって下さいませ。」
 ささやくような小さな声に私は肯いたが、彼には見えただろうか。 薄く青く光る夜空にくっきりと欄干の影が見えていた。柱の向こうに愛しい媛がいる。
「母君。」
 小さく呼ばれて、私は彼の媛に駆け寄った。
「やっと、やっと逢えました。」
 そう答えながら、私は娘を胸に抱く。
 その時、男は、私達を守るように身を乗り出し、剣を抜いた。いつの間にか、何人かの刺客が私達を取り囲んでいたのだ。
「媛、お逃げなさい。」
 その声に、媛は従者に手を取られて、風のように逃げていく。それを確認した男は、刺客達に向かって声を放った。
「こちらにおわすは、どなたと心得る?!私は、ウチツオミ・ナカトミノカマタリなり!」
 その名前に刺客達が動揺するのが感じられる。と、もう一つの声が闇を裂いた。
「カマタリであったのか。」
 それは、私の息子の声だった。
「ヒツギノミコ・・・・。」
 呆然としたようなカマタリの声。
「おまえが指定した場所がここであったとはな。」
「恐れながら、ミコ。なにゆえに?」
「今宵、ここに謀反人が現れると密告があった故。」
 息子は何を言っているのか・・・。 
 我が娘と会うことを許さなかったのはこの息子だ。それが、今夜、闇に紛れて一目会わせようと、息子の腹心であるウチツオミがそう言ったのだ。そうして、私はカマタリの案内でここいる。
 二人の会話を聞きながら、私は、いつか、この息子に殺されるのではないかと、そう思うのだった。

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